舞台「やがて君になる」感想

舞台
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■最初に
舞台に関わってくれた全ての方へ。
『やがて君になる』と向き合ってくれて、愛してくれて、ありがとうと言いたい。

『やがて君になる』は原作から知っている大切な作品だったから、舞台化の発表当時は不安の方が大きかった。アニメで完成形を観てしまった感覚もあって。何より、生の人間で観たとき、どうなるのかが怖かった。

■初日
とにかく萌香さんの燈子に圧倒された日。
まず見た目が完璧。沙弥香が顔で惚れたっていう超ハードルをちゃんと超えてると思う。
憧れの先輩の面、幼い妹の面。そして暗闇から手が掴みかかってくるような隠された内面。この心臓を掴んでくる演技力が、萌香さんの魅力だと思う。

最後、スクリーンの『やがて君になる』の前に「舞台」という言葉が書かれているのを見て、ああとうとう、ここまできたんだ……としばらく浸っておりました。

初日時点で気になった点がなかったわけでもない。
台詞を全体的に急いでしまっている印象。これは二回目に観に行った時点でかなり解消されていたと思います。
そして、沙弥香になろうとしている沙弥香を感じた。ただ沙弥香は、公演中に飛躍的な進化を遂げていくので、その過程が見られたのも舞台らしくてよかったなと思う。

■階段
舞台の階段を観たときに、立体三角形やるとこまでは想定内だったけど、まさか三角形の重心までやってくれるとは思いませんでした。
原作知らない人には次の場面にスムーズに繋げているように見えて、原作知っている人は重心で歓喜する。好きだ、そういうやつ。

階段を使った演出だと、
踏切の緊張感、
燈子の甘えたくなるけど大丈夫?
侑も変わっていいんだよ、
という、降りてきて同じ段に立った後の言葉が印象に残るように演出されていたと思う。

■美里さんの侑がいとおしい
スクールバックを肩にかけたときの侑の小ささ。これが黄金比。
ぴょこぴょこ歩くだけでかわいくて、原作の侑の歩き方を思い出した。

侑の正面階段の降り方。槙くんに一緒に劇を阻止しようよって言うとこ。右腕の上げ方がよいのです。美里さんの侑は、小さい身体から溢れるエネルギーを感じて、それがまた、いとおしいんだな。

原作の侑はクールでドライ。人並み外れた器の大きさで燈子を受け入れる。
美里さんの侑は、その器から溢れる瞬間の演技を様々な角度で観させてくれた。
こんな小さな女の子が、燈子の痛みをずっと受け止めてくれたんだなって思うと、また泣ける。
美里さんの侑の1番好きな台詞は
「先輩のこと、好きにならないよ」
ですね。心臓ちぎれました。侑はもう息できてない状態で、それでも燈子のために自分を削って伝えた愛の言葉だった。

■河原
侑の台詞を聞いているときの燈子の表情が見えること。これ舞台化の最大おすすめポイントです。下手席じゃないと観られないというのも舞台らしい。
侑が「先輩のこと、好きにならないよ」
と言った瞬間、萌香さんの燈子の涙がライトに反射して客席に届いた。
ここで河原の劇伴いいよね。1番好き。ピアノの音は、二人をつなぐ糸。
そして、照明。

星がね、空にうかんでいったんだよ。

後ろ中央の席で観られた日は、目のなかを星が埋め尽くしてくれて、そのなかに侑と燈子が立っている姿が、美しい絵画を観ているようだった。
アニメでは、二人の間の壁が印象的だったけど、劇では、二人が一つの世界を共有していている印象が強かった。歩み寄っていく過程をカメラを切り替えず、ぜんぶ通して目にすることができたのが大きい。

■星に託された侑の思い
星は、原作から大事にしてつくられている。
星は侑の「好き」。
それは燈子のくれたプラネタリウムが見せてくれたもの。河原では、侑と燈子の内側から溢れて、空に上がっていく。美しくて遠くて溢れてくる光。

アニメで、星が燈子なんだよって見せる演出が好きだったのだけど、劇は一段階はさんでそれが心に届く。
まず星が綺麗って思うんだ。なぜかと一瞬考える時間がある。それは燈子の見せてくれた光だからと気づく。この、心にぽんってのっかる瞬間に涙が止まらなくなる。

■『佐伯沙弥香について2』を受けて
公演中に『佐伯沙弥香について2』が発売されました。
『佐伯沙弥香について2』のすごいとこは、「燈子について」でもある作品だったということ。110ページ、とーこのページ!!
「そっか。私はさっきパーを出さないといけなかったんだ」
あの言葉が胸を離れなくて。
何度、じゃんけんのこと、考えたんだろう。
今年しか、もうチャンスは残されていないのに、侑が反対って言ったとき燈子はどんな気持ちになったんだろう。ちがうって今までの自分を否定されて……
考えれば考えるほどね、とうこおおおって。
千穐楽では、それがバックでずっと流れている感覚。燈子はずっと考え続けてきて、それを萌香さんはずっと受け止めてくれた。改めて尊敬する。

■燈子を舞台に立たせた光。そして──
劇中劇開始前のそれでも侑を信じたいってなるところ。まだ震えたままで、それでも信じたい、前に踏み出したいという燈子の決意に胸を打たれました。目のなかで涙を溢れないようにして、舞台の真ん中でスポットライトを浴びて向き合っている。交通事故を思い出しているシーンでは、スポットライトの光は残酷に浴びせられる光でしたが、このシーンの光は、萌香さんが演じる燈子の光だと感じました。

■表では描かれなかった、佐伯沙弥香について
これは沙弥香を大事にしたゆえの決断であったと思う。
ただ、伝わってきたのは、花凜さんは、ぜんぶ知った上で沙弥香でいてくれたということ。
千穐楽の沙弥香の演技。
「私が無邪気に信じてるとでも思った?」
これ浴びて、私、沙弥香のことなんもわかってなかったんだなって思いました。
ずっと見ていたという言葉の重みを、舞台を通して感じとれた。

あと、円盤にのるかわからないけど、舞台からはけるときに髪の毛を手で払う仕草を後ろでやっていて沙弥香でした。

■侑沙のリンク
「私だけがあなたの特別でいられたのに」
という沙弥香の言葉を侑に真後ろで聞かせる演出。逃げ場のないところに侑を立たせる舞台が、ずるい。限られた時間のなかで、侑の変化を納得できるようになったのは、ここの演出が効いているのではないかと思う。

■鍵をかけたガラスの箱
最初客席に座ったときに、窓が目に飛び込む。まさか、あれに文字を映すなんてね。
言葉を文字で魅せる演出はアニメでもやっていて、それを引き継いでくれたのも嬉しかった。
言葉はいくつかあったけど「似てないな」が1番印象に残っている。それが映された窓って、「鍵をかけたガラスの箱」だったのではないかと舞台を振り返って思った。ガラスって、強固さと壊れやすさが表裏一体だけど、それがあの舞台装置だったのかな。言葉によってヒビが入る音がした。

それで、その上を星がなぞるのがまた綺麗なんだ。侑が見ていたのは直接に見る星の光で、燈子が見せてくれた光。燈子が見ていたのは壊れたガラスを通して見る星の光で、それは燈子自身から生まれた光だったわけで。

■そして、彼女たちは決断をする
人は震えながら、それでも何かに突き動かされて、決断をしなければならない。
舞台「やがて君になる」が改めて気づかせてくれたことです。

隣にいること。
好きになること。
好きと伝えること。
踏み込むこと。
自分でいること。

上手くいく確信なんて、全部ないんだよね。
それでも、周りの影響を受けて、支えられて、変化し、最後に自分の意思で決断をする。その過程の美しさ、気高さを全身で浴びました。

痛みを背負ってくれて、それを演技で教えてくれて、最後まで彼女たちとして生きてくれて、本当にありがとうと演者の方々には言いたい。

■舞台を観て
原作、アニメとはまた違った、彼女たちが目の前に生きている感覚がしました。特に、等身大の高校生として、一人の女の子として、彼女たちが背負っていたものを舞台は教えてくれました。
『やがて君になる』への愛が深まる舞台だと断言できる。
舞台からバトンを渡され、次の『やがて君になる』が何を見せてくれるのか、非常に楽しみです。

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