今日は怨みのレヴューの話です。
怨みのレヴューは寮から始まっていた説の検証の発端は、11月28日にバルト9で行われた舞台挨拶で、グラフィックデザインを担当されている濱祐斗さんが怨みのレヴューで印象に残ったシーンは? という質問で寮の香子の話をされて、怨みのレヴューは寮から始まっていた説が話題に上がったことです。
本当のところどうなのか気になり、その後に映画を鑑賞して分析したところ、確かに寮から始まってるという結論に至りました。
劇スの法則:食らって乗り越えなければいけない壁の象徴は「6」
スタァライトという舞台少女たちが次のステージに行くために食らって乗り越えていかなければならない壁は「6」で表現されるのが劇スを通して一貫していると考えています
わかりやすいのはトマトのヘタの数です。劇スではトマトのヘタが4、5、6、めっちゃ多いの4種類が登場します。それぞれどのシーンだかわかりますか?
今回、関わってくるのは6です。6つのヘタのトマトは冒頭と終盤で破裂する華恋のトマト、そしてキリンから渡され舞台少女が食らってワイルドスクリーンバロックに挑む時のトマトです。
実は「6」は他のレヴューでもキーになる数字
vol.11の記事で競演のレヴューでは、まひるの「ねえ」の数が6という話をしました。
そして、この6の法則が怨みのレヴューにも適用されるのではないかと検証してみたところ、あったんですよ……しかも怨みのレヴューではもっと入り組んだ構造でした……
怨みのレヴューでポイントになる台詞は主に4つ
それぞれの登場シーンをまとめます。
うっとおしい5回 (1~2)香子「うっと……はぁ、うっとおしい」 (3)香子「なんやその、お前のため感。うっといねん」 (4~5)香子「理想論に一般論、正論ばっかの垂れ流し。星見? 天堂? どおでもええわ、他の女なんか。うっといねん、大人の理屈なんて。本音さらせや。うっとおしなったんやろ? 表出ろや」
なんで5回 (1)香子「新国立、なんで一人で決めたん?」 (2~5)双葉「なんで、なんで、なんで…… なんでわかってくれないんだよ!」
ずるい5回 (1~3)双葉「なんで、なんで、なんで…… なんでわかってくれないんだよ! 毎日駄菓子買って、寝かしつけて、送り迎えしてやったじゃん! ずるい! ずるい! ずるい!」 (4~5)双葉「ずるい。やっぱり、香子ばっかりあたしを独り占めして、ずるい」
しょうもない6回 寮シーン (1)香子「世界最高峰の歌劇団、やろ? しょうもな」 (2)香子「しょうもな」 (3)香子「うちが、一番しょうもないわ」 清水シーン (4)香子「うちら、ほんまにしょうもないな」 (5)香子「ほんま、しょうもないで。うちらは」 (6)双葉「ほんと、しょうもないな。あたしたち」
「しょうもない」6回を交わすまでに辿る道がとにかくエモエモ
「しょうもない」が6回香子と双葉の間で交わされることが怨みのレヴューの終着点だったので、寮シーンから怨みのレヴューは始まっている説を私も押してます。
そして、ここに至るまでのやり取りが、ふたかおらしい見どころになっているとも感じました。
まず寮の時点で香子は、自分がしょうもないという自覚と約束された未来が見えてしまっている状態、すなわち「わかってる」状態だったことが切ないです。
「うちが、一番しょうもないわ」の時、香子は非常口の一番近くに立っており、一人で次の舞台に行こうと思えばすぐに行けてしまう表現がされていたのではないでしょうか。
それでも、電車を降りてしまう前に双葉の本音を聞きたい。せっかく一本堂(一本道)から逸れてセクシー本堂に連れてきたのに、肝心の双葉は他の女の名前を出します。
香子は「うっとおしい」を5連発食らわしての「表でろや」でレヴュー曲が流れ、観客は鳥肌モノなわけです(マジここ演出が天才!)。
香子「これにて、縁切りや」に双葉が「いやだ!」と返し、「なんで」を4連発します。双葉は、セクシー本堂の香子の「なんで」に返してるのです。
そして双葉の「ずるい」3連発が引き出される(泣きすぎて情緒がよくわからなくなる)。
2人は時速100㎞ですれ違っていきそうになるところに、香子が4回目の「しょうもない」を投げかけて、双葉は、はっとします。
双葉が「ずるい」を2回漏らし、あと残り1回になったところで木は折れ、2人で落ちた先で「しょうもない」を交わして、レヴューは終了します。
ふたかおの交わす言葉の過程を意識しながら鑑賞すると、また違った感情が沸いてくるのではないでしょうか。